金沢はじっとりとした天気が今週中続くようですね。
明日からは真夏日になると予報が出ていますので熱中症にはお気を付けください。
本日は久しぶりのお品紹介となります。
まめな箱書きの付いた小ぶりな刷毛目茶碗をご紹介いたします。
鶯谷庄米 刷毛目茶碗(明治時代)
口径 9.9cm
底径 4cm
高さ 4.8cm
鶯谷庄米 略歴
天保元年(1830)〜明治45年(1912)
金沢生、名を「庄平」、晩年の別号を「老龍鱗」という。
代々の屋号を「松屋」といい、初期の頃は「松谷」印を使うこともあった。
37歳の時、養子に入り「鶯谷」となる。
陶工 原呉山について茶道を学んだことをきっかけに作陶の道に入り、鶯谷久田窯の横萩一光に製陶を学ぶ。
後京都で修行し、戻って久田窯を継いで数年、野崎佐吉にこの窯を譲って自らは小川町で作陶した。
作品は南蛮・伊賀・信楽・青磁・染付・楽など幅広く写しを製作した。
器の形に沿って自然な流れで刷毛目が引かれた茶碗です。
庄米は様々な写しが得意だったようですが、刷毛目が上手なことでも知られています。
土見せになっている高台の側には見難いですが「庄米」の押印がされています。
中年の頃、青木木米を慕って「庄米」を名乗るようになり、この印が最も使用の多い代表的なもののようです。
箱書に「茶わん」と書かれているため「茶碗」と呼びましたが、大きさは大振りな盃ほどとなります。
茶碗にしては小さ過ぎるので、おそらく、盃として製作された品と思われます。
そして、この盃には丁寧な箱書が付いています。
一辺が12cmの箱蓋の上にびっしりと書かれた文字、その内容は庄米の略歴となります。
裏側にはそれを記した年月日も書かれています。
かつての所有者の几帳面な性格と、どれだけこの盃に価値を見出していたかがよく伝わります。
古いお品の中にはこうした人の足跡があることがよくありますが、このような物に対する人の思いの積み重ねを知ることが出来るのは面白いですし、古い物の良いところであるように思います。
試しに何か一つ古い物を手にしてみて、それについて色々調べてみるのはいかがでしょうか。