唐物手付小籠

2020年09月05日

台風も来るようになり、風も心なしか涼しくなり、まだ暑い日々ですが、秋が顔を出してきたようですね。

当店の庭では高砂芙蓉が花をつけ、初秋の景色となっています。

本日の「骨董のはなし」では可愛らしい花入をご紹介いたします。

唐物手付小籠

高さ 15.0㎝

幅 11.5㎝

茶道でよく使われる籠花入は主に竹・籐・藤蔓を編むことで作られています。

こちらの小籠も恐らく籐ではないでしょうか、それを使って編まれた胴の外周に薄板がめぐらされ、臑当(すねあて)となっています。

また、全体に漆塗りが施されており、所々に入れられた朱漆の線が華やかさを足しています。

別の用途のために作られた物を、お茶道具として見立てるのは茶道ではよくあることです。今回のお品もそのようで、同じ素材で緻密に編まれた蓋が付いています。

元々は花入として作られた物ではないということなりますが、これを手にした人は花入としてもやはり使用したようで、後補の竹の中子が付属しています。

ところで、このお品の箱には明治期の日本画家、浅井柳塘(1842〜1907)がこの籠を愛蔵したという箱書があります。

彼は京都で四条派を学んだ後に長崎で南画を学び、帰京してからは南画家として名を馳せた人物です。

長崎に繋がりがあったようですから、そういった舶来の品を入手しやすかったのではないでしょうか。

また、本品とは直接関係がないかもしれませんが、「大阪錦絵新聞」第37号には、彼が出張中に彼の京都の自宅で起きた凄惨な事件を取り上げた記事があるのも見つけました。(早稲田大学古典籍総合データベース

このように箱書があると、お品の物語が広がるので面白いように思います。

この小籠は単に飾り物としても、花入としても、筆立てにしても素敵かもしれません。

それぞれの見立てで楽しめるお品です。