阿蘭陀色絵花鳥文盃

2020年12月19日

金沢は今晩辺りから雪が本格的に積もりそうですね。

降雪が例年より少し早い気がするのですが、冬支度は完了しましたでしょうか。

今回は、これまで陶芸作家の中田さんのお品でよく取り上げてきました阿蘭陀陶器、その良い盃が入りましたのでご紹介いたします。

阿蘭陀色絵花鳥文盃(17〜18世紀)

口径 7.4㎝

高さ 4.4㎝

たっぷりと掛けられた錫釉の青味がかった白地の上に、黄・青・赤・緑による花鳥文が絵付けされた盃です。

絵付けの上にはクワルトと呼ばれる透明な鉛釉が掛けられています。

その鉛の還元によるものでしょうか、光にかざすと虹彩が見えます。

高台には焼成時にできた畳付きがあり、キメの細かく鉄分を含んだ胎土と、糸切りの表情が伺えます。

色絵花鳥文急須・茶碗
根津美術館『阿蘭陀』昭和62年発行

こちらの盃は同手のものが『阿蘭陀』(編集発行 根津美術館、昭和62年)に掲載されています。

この写真から、元々はティーセットのカップとして作られたものであったということが分かります。

紅茶文化がヨーロッパで始まったのは17世紀、オランダが中国から輸入した紅茶を広めたのが始まりです。

その際に船に同載された中国磁器も同時に広まり、シノワズリの流行となります。

従って、紅茶を貴族階級が楽しみ始めた当初は、ティーカップは今日で言うところの煎茶碗であり、ハンドルは付いていませんでした。

このお品はまさにその頃のものということになります。

色調はスペイン影響下にあった当時の独特のものですが、孔雀とも鳳凰とも尾長鶏ともつかない鳥やモチーフの構図、力の抜けた筆致は確かに中国の染付を彷彿とさせます。

阿蘭陀は、お茶道具でよく使用される中国や本国のやきものとは一風異なる趣のある点が面白がられ、お数寄者によく好まれてきました。

この盃は西洋的な雰囲気に加え、中国的な雰囲気もあるという点で、更に面白みのあるものと言えるのではないでしょうか。

お店の方は冬のラインナップとなっております。

クリスマスやお正月に活躍しそうな器をお出ししておりますので、冬の買い出しついでに覗いてみてください。