九谷 小急須

2021年02月27日

先日は暖かかったので、春になったのかとてっきり思いましたが、天気予報を見るともう少しかかりそうですね。

今回も雛祭りにちなみまして、小さなお品をご紹介致します。

九谷 小急須(明治〜大正)

幅 10.2㎝

奥行 7.1㎝

高さ 7.1㎝

正面には萩と牡丹の花が広がるように描かれ、その周りに蝶が舞っています。

背面には金彩で「虫聲繁」の三文字。

蓋と取手と注ぎ口は和全風に金蘭手となっており、赤地に金彩が施され、そこに細かく毛掻きがされています。

蓋裏を見ると「大日本九谷製 珉山」と銘があります。

この「珉山」という陶工はあまり名のある陶工ではなかったのか、詳しいことは分かりませんが、「大日本九谷製」という文字からこのお品が海外への輸出用に作られたものであることが分かります。

また、描かれた花々に水彩のような淡い表現が見られますが、これはテレビン油という松脂から作られる油を上絵の具の溶剤として使用して濃淡を表現する、この頃に始まった技法を使用しているためです。

「虫聲繁」という文字からも分かるように、秋を画題とした急須ですが、小さくて可愛らしい大きさなので、ご紹介致しました。

この小さな急須はどのように使うために作られたのでしょうか、煎茶器でしょうか。

お店では同じ頃の九谷の小さなカップと合わせて置いてみました。