白丹波徳利

2021年05月28日

 

雨の多いこの季節、久しぶりに晴れると気分も華やぎますね。

来週あたりに店の展示替えを行う予定です。

本日は一足お先に夏に向いた白の涼しげなお品をご紹介いたします。

 

白丹波徳利(幕末頃)

高さ 25㎝

胴径 10.5㎝

 

 

白丹波の辣韮形の徳利です。

全体に象牙に似た柔らかな色の白釉が掛けられ、その緩やかな形と合間って優しい印象です。

口には透明釉の掛かっていない部分と、透明釉が溜まって淡い緑色を成している部分があり、景色となっています。

胴には前後二箇所にへこみが付けられており、これも見所になっています。

底は丹波独特の真っ平らで、鉄分のある少し赤みがかった素地を見ることができます。

 

 

 

丹波焼は、その製造年を作行きによって大きく三段階に分けられているのですが、前期(中世)の丹波焼は自然釉の焼締めであり、中期(江戸前半)から施釉陶が始まります。

その中でも白丹波は、伊万里焼が一般に普及し始めた頃に合わせて作られ始めたもので、後期(江戸後半)に作られたものとなります。

白磁の広まりによって作られたものですから、白釉を施したものは高級品として作られた物が多いようです。

しかしながら、本品の窯傷を気にせずに焼かれたような肌を見ると、高級品としてというより、民具として作られたもののようです。

 

 

 

こちらのお品、我々が「徳利」と聞いて想像する大きさよりは大きな徳利ですが、丹波の徳利としては一般的な大きさです。

また、水を注ぐと現れる染みの表情の変化も楽しい徳利となっています。

そのまま飾っても白い肌が涼しげですし、口が狭いので花生としても使いやすいです。

勿論、本来の使い方の酒器としてもいかがでしょうか。

 

 

 

参考文献

林屋清三編(1972)『日本の陶磁 第2巻 備前 丹波 伊賀 信楽』中央公論社.

楢崎彰一編(1977)『日本陶磁全集 11 丹波』中央公論社.