初代大樋丸龍香合

2023年12月27日

年の瀬が迫り、今年も残すところあとわずかとなりました。近江町市場ではタコやタラなど、お正月に向けた食材が並び、おおいににぎわっています。

さて、本日は来る新年に向け、来年の干支より龍がモチーフの香合をご紹介いたします。

初代大樋長左衛門作 丸龍香合
了々斎箱書付
蓋裏に在判あり
幅7cm 奥行き5.5cm 高さ3.7cm

<初代大樋長左衛門 寛永8年(1631)~正徳2年(1712)>
河内国土師村(現 大阪府藤井寺市)生れ。京都で楽家四代一入に学ぶ。1666年加賀藩五代藩主・前田綱紀が茶道普及のため京都から裏千家四代・仙叟宗室を招いた際、茶碗師として長左衛門が同道し、河北郡大樋村(現 金沢市大樋町)で楽焼の脇窯である大樋焼を始めた。

香合の蓋甲面に龍、蓋裏に印、身の底部には丸い三つ足が付けられ、箱蓋裏には「大樋焼 丸龍香合」と、表千家9代・了々斎( 安永4年(1775)~文政8年(1825))の書付があります。

飴釉のねっとりと柔らかくあたたかみのある肌合いが味わい深いです。


蓋甲面、龍の綺麗に並んだうろこや繊細なひげ、顔の細かな造形の巧みさが目をひきます。
また引きで見ますと、蓋をぐるりと囲むように大きくうねる胴体や力強く鋭い爪が印象的です。
龍というと少しいかつく怖いイメージもありますが、この作品は龍の表情や飴釉の色味も相まって、むしろ柔らかい印象を受けます。
初代大樋はこのほか、亀や蟹をあしらった香合、烏、獅子の香炉など、動物モチーフの作をのこしています。

香合は古来、その小さいながら鑑賞としても美しいことから珍重されてきました。
今回ご紹介した龍香合も細かな造形や飴釉の美しさなど見どころが詰まっており、じっくり鑑賞する楽しさを味わえると思います。


<参考>
石川県の工芸-江戸時代から現代まで-  石川県立美術館 平成3年発行