彩色金襴手盃
2016年03月26日
最近ではまだ寒い日もありますが桜のつぼみの膨らみが日に日に春の訪れを実感させてくれますね。
さて、今回は眺めているだけでお花見気分にさせてくれる盃をご紹介いたします。
彩色金襴手盃 <明治>
口径 6.5cm
底径 2.8cm
高さ 4.0cm
こちらのお品は全部で五客あり、九谷庄三風の彩色金襴手で山桜や杜若、菊など四季の花が繊細な筆遣いで生き生きと描かれています。
端反りで口当たりも良く、腰の部分に厚みがあるため手取も軽すぎず安定感のある重みです。
深めに削られた高台の際にほんのり青味がかった釉薬が溜まって爽やかですね。
桜の花びらの薄紅色が儚さを醸し出しています。
桜の花はいつから人々に愛でられるようになったのでしょうか。
もともと桜は農耕文化と深く結びついており、その年の豊凶を占う木でもありました。
花を観賞する文化は奈良時代に中国から入ってきました。
その頃は桜よりも中国伝来の梅が上流階級に愛され、『万葉集』では桜より梅の花を歌う詩が多くつくられました。
桜が花の代名詞のようにいわれるようになったのは平安時代からで『古今和歌集』(905年)や『後拾遺和歌集』(1086年)には桜の歌が数多く収載されています。
鎌倉時代からは武士の時代であったこともあり散り際の潔さが強調され、散る桜に深く哀れを覚える日本人の美意識が定着しました。
このころまでの桜文化は上層社会のものでしたが江戸時代になると一般市民の間に浸透し、花を見ながら宴会などをする「花見」は日本独特の文化となりました。
東京では開花宣言がされたそうですが金沢は開花までもう少しかかりそうです。
お酒を注ぐと見込みに描かれた花が浮き上がっているように見え、酔いも合わさり楽しいお花見になりそうですね。