水野源六製 象嵌薄端
2018年04月14日
金沢は天候が安定せず、なかなか暖房から離れることができない春となっております。
皆様も体調管理にはお気をつけください。
今回は先日新しくお店に出しました加賀象嵌の薄端を紹介いたします。
水野源六製 象嵌薄端(明治)
口径 26.1cm 底径 20.1cm 高さ 41.5cm
全体に銀・銅・赤銅が象嵌され、金色絵が施された豪華な品になります。
胴部の片面には柳に鳥、もう片面には秋草に狐が描かれ、胴下の台座には菊と桜が片面ずつ描かれているため、春秋を表していることが分かります。
薄端は分解できるようになっており、広口・胴部・台座・耳に分かれます。
そして、胴部の底面に「加賀國金澤銅器會社 製作人水野源六」と銘があります。
銘の一行目の銅器会社とは明治10年に金沢長町川岸(現在のせせらぎ通りの辺り)四十四番地に開業した会社であり、その名の通り、海外輸出や宮内省・資産家などに向けた高級銅器を製造した会社です。
二代目金沢市長を務めた長谷川準也が開業し、武士という後ろ盾を失った当時の職工たちを救済する意味合いもあったようです。
二行目の水野源六とは明治期金沢の金工における名工として知られた人物です。
この水野源六家は藩政期に後藤家に代わって加賀藩御細工所の白銀職頭取を勤めた、加賀象嵌における重鎮でもあります。
こちらの薄端は明治のものですので、八代もしくは九代の作となります。
この時代の品は職工の技術力の高さがよく分かるものが多いのが特徴です。金沢へお越しの際はぜひ間近で御覧になって、その技に目を凝らしてみてください。