薩摩盃
2018年09月01日
9月に入りましたね。
これまでの晴天の反動かのように不安定な天候が続いております。
秋らしくなってきたということでしょうか。
今回はその秋にちなんで菊文の盃をご紹介いたします。
薩摩盃(明治時代)
口径 4.7cm
高さ 5.0cm
前面
背面
「米岩」銘
金襴手の盃で、口縁と高台にも金彩が施され、華やかなものとなっています。
実はこちら、九谷の窯で焼かれた薩摩焼となります。
一般的に薩摩焼の錦手というと、金彩で縁取りを行い、その内側を色絵具で彩色します。
しかし、本品は色絵具で縁取り、その内側に金彩を施しています。
本物の薩摩焼と異なることを示す為でしょうか。
その理由は定かではありませんが、面白みがあります。
図様を見ると、籬(マガキ)に菊となっています。
器という画面の中で菊が曲線的に伸びやかに描かれ、一方で直線的にアンバランスに組まれた籬が緊張感を与えています。
試しに「籬に菊」を画題としている作品を調べると、地面と平行に描かれているものがほとんどです。
従って、この盃の籬は意図的に不安定に組まれており、そのような効果を与えるために描かれたものであるといえます。
形は盃としては厚手ですが、安定感があり、年月を経た金彩の華やかでありながら落ち着きの感じられる様も演出しています。
詳しい来歴は不明ですが、飾っても良し、使っても良し、の非常に面白いお品です。
秋の夜長のお供にいかがでしょうか。