和ガラス茶碗
2019年05月25日
ここ数日、雨がほとんど降りませんね。
気温も夏日を記録しており、外を歩く人々も夏の装いになっています。
まだしばらくこの天気が続くそうですので、本日はガラスのお品で早めの涼をお届けいたします。
和ガラス茶碗(江戸後期)
口径 14.1㎝
底径 5.2㎝
高さ 5.6㎝
ねじり菊形の黄色い和ガラスの茶碗です。
こちらは型吹きで作られており、少し端反りになっています。
当時は型吹きでガラスの器を成形することが主であったようで、図録などでも型吹きの物は多くありますが、皆同じように反りがあります。
びいどろふきの図
(三宅也来『万金産業袋』3巻、1732年 国立国会デジタルコレクションより)
ここで、当時のガラス製作の参考資料としてよく引用される『万金産業袋』(ばんきんすぎわいふくろ/1732年刊)を読むと、
「菊ちゃわんは土にて菊形の型をこしらへ置きその中にふきこむ。」
とあります。
本品はねじりがありますが、「菊ちゃわん」は類似した形の器だったと思われます。
型の「中にふきこむ」とありますから、平らに均した土を凹型に削ってそこにガラスを吹き込んだのでしょうか。
文章だけからでは確実なことは言えませんが、器の型が終わり、少しだけ平らな面に伸びたガラスが端反りの部分になったことがわかります。
こちらのお品は古い箱に入っており、箱蓋には「びいどろ 水のみ」と書かれています。
「びいどろ」とはポルトガル語の「vidro」(ヴィーズロ)が語源だそうです。
びいどろと呼ぶと、古めいた印象とガラスの舶来の歴史が感じられ、この茶碗自体のセピアがかった黄色と相まってノスタルジーを覚えます。
しかし、実際のところ当時のガラスの製法は中国由来のものだったそうです。
シンプルな器でも調べてみると奥が深いですね。