萩俵形酒呑

2019年09月21日

金沢は暑さも和らぎ、日差しの弱い日や夜は夏服だと肌寒く感じるようになって参りました。

本日は、今の時期にぴったりな味わいのある盃を紹介いたします。

 

萩俵形酒呑 (江戸末期)

口径 7.3cm

底径 3.0cm

高さ 4.6cm

 

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枇杷色の肌、そこに入った細かな貫入、鉄分の多い荒めな地、割高台、とても萩らしい盃です。

抑揚のある轆轤目と白象嵌で俵が表現されています。

肌は萩焼に特徴的な枇杷色をしていますが、緻密な貫入から生まれる染みによって、色に深みが出ています。

高台は内も外も大胆に削り出し、ざっくりと切れ目を一つ入れています。

 

萩焼は、文禄・慶長の役(1592〜1598)の後に朝鮮半島から連れてこられた陶工李勺光・李敬の兄弟、その他陶工たちが毛利輝元の命により松本村で開窯したことが始まりだそうです。

高取焼や上野焼などと同様、侘び茶の隆盛に伴って始まった製陶で、高麗写の器が多く作られました。

この盃も多くの見所があり、小さな茶碗のようで、そのような流れの中で生まれてきた盃であるとよく分かります。

 

 

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ところでこの盃、側面にも象嵌が施されているのですが、判然としません。

俵というと鼠を連想するのですが、この盃の側面に描かれているものは鼠ではなさそうです。

アフリカの壁画のような人物が二人(親子でしょうか)描かれているようにも見えます。

皆様は何に見えますでしょうか。

 

俵は仲秋の季語になります。

秋野菜や秋刀魚など秋の実りを使った晩酌に合わせると素敵ですね。

 

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