桜忍蒔絵雪吹
2020年02月21日
立春を過ぎて暦の上ではもう春ですが、まれに暖かい日はあるもののまだまだ寒い日が続きますね。
今年は二回ほど雪が降りましたが、石黒商店のある十間町では雪すかしをするほどでもありませんでした。
少し寂しいですが今年も昨年に続き雪すかしをせずに冬が終わりそうです。
さて、話は変わりますがブログでは日々使いやすいお品のご紹介が多く、今更ながらお茶道具のご紹介をほとんどしていないことに気が付きました。
店頭にはお茶道具や普段使いのお品を多く並べております。
お電話などでお探しのものをお伝えいただければ店頭に並んでいないものでも予めお出ししておくことができますのでお気軽にお問い合わせくださいませ。
本日は春を待ち望む気持ちを込めて桜としのぶ草の蒔絵の可憐な薄茶器をご紹介いたします。
桜忍蒔絵雪吹 <明治~大正>
高さ 6.5㎝
径 6.5㎝
雪吹とは薄茶器の形の一つで利休形十二器のうち、中次に属しています。
蓋は中次よりもやや浅く、肩と裾が面取りしてあり上下の区別がつきにくいことから、吹雪の中にいるさまを見立てた名称です。
金地に切金と螺鈿で桜の花を表し、蒔絵でしのぶ草が描かれています。
桜の葉は葉脈部分に針描きといって金を蒔いた後に引っ掻いて細い線を表し、しのぶ草は葉先まで細やかに表現されており技巧が凝らされています。
内側は黒く塗られていますが時代が経って漆が透けて光の当たり具合によっては飴色にみえます。
木地も痩せて木目が透けて見え、このお品が長く大切にされてきたことが伺えます。
桜は意匠化され春風に舞っているかのよう散らされており、冬を耐え忍び春に新芽を出すしのぶ草と相まって春への喜びのようなものが感じられますね。
少し暖かくなってきた春先の茶事にいかがでしょうか。