色絵人物紋煎茶椀
2022年04月15日
桜も見頃を終え、初夏を思わせる気温が続きましたが最近はまた肌寒い日が続きますね。
春になるとつい手に取りたくなる煎茶碗があります。
本日は描かれた人々の様子が可愛らしい陽気な煎茶碗をご紹介いたします。
色絵人物紋煎茶椀(明治〜大正)
口径 6.1cm
高台径 3.5cm
高さ 4.0cm
色鮮やかに様々なポーズの人物の描かれた賑やかな煎茶碗です。
このお品は万暦赤絵の写で、箱には伊万里と書いてありますが正確な産地はわかりません。
大事そうに金の桃を(宝珠かもしれません)抱えている人、両手を広げて空を仰ぐ人、座禅を組む人、踊る人などの人物が描かれています。
見込みには四肢を広げ正面を向いた龍の絵が描かれており、この手のタイプのものはこの龍が描かれている事が多い印象を受けます。
時代が下ると絵が段々と変わって竜の耳が大きくなり蛾のような絵もあります。
下の写真の右側のものは別の時期に仕入れた煎茶碗ですが、昭和初期頃のおそらく九谷製だと考えられます。
(今回お紹介のお品)(昭和頃の九谷製)
(人物の描かれ方もだいぶ違う)
万暦赤絵とは、中国の明代の万暦年間 (1573~1619) に景徳鎮窯で焼かれた染付と色絵を併用した磁器のことで、中国では万暦五彩と言われています。
政治経済の変動が激しい時期で、染付の原料である回青が乏しくなったために染付の優品はあまり見られませんが赤絵は染付を補って余があるほど濃艶で華美でした。
お品に戻りますと高台の銘が「大明万暦年製」と描かれていることはもちろん、五彩で色鮮やかに細かく絵付けされており見た目からも万暦赤絵風であることがわかります。
人物の絵は数えてみるとお品によって6人であったり8名であったりと描かれている人数が違います。
中国の八仙かと思い調べてみましたが服装や持っているものなど違うため当てはまりません。
8名なのはおめでたい数字の「8」になぞらえて描かれた人数なのでしょうか。
6人のものと8人のものでは少し密度が違いますが人数を数えるまで気づかないほど違和感なく上手に空間が埋められています。
筆のタッチからも同じ人物によって描かれたものと予想されますが、人数が違うのはゆるくて面白いですね。
人物の柔和な表情と、草木は黒い輪郭線ですが人物の絵だけ茶色い線で描き分けられているのもまた軽やかさを演出しています。
余白部分に描かれた緑の小さい幾つもの丸がこの時期は桜の花びらにも見えてきますね。
一客でも可愛いですが何個か揃う様子がみんなでお花見をしているかのようでまた可愛らしく見えてきます。
広大が高めなので片手で扱うときに指がかかりやすく持ちやすいのも嬉しいです。
煎茶碗としてはもちろん、盃や小鉢豆鉢としていかがでしょうか。