伊万里南京赤絵鹿絵写中皿

2023年10月08日

10月に入り、やっと気温も落ち着いたでしょうか。秋のすがすがしい空気が感じられる様になりました。
先週は中秋の名月でしたね。今年は満月とも重なったようで、各地でお月見を楽しまれた方も多いのではないでしょうか。


さて本日は、秋を思わせる鹿がモチーフのお品をご紹介いたします。

伊万里南京赤絵鹿絵写中皿
直径 16.3cm
高さ 2.5cm




明末清初ごろの南京赤絵を写したと思われます。
箱裏に文政元年と書かれていることから、江戸後期ごろに作られたのではないでしょうか。

見込みに呉須、その周縁を赤絵の上絵付けで飾っています。
呉須の色は落ち着いた黒っぽい藍色が特徴的です。
模様を見ますと見込み中央に一頭の鹿が何かに振り向くようなポーズで立ち、その背中の上あたりには鳥が、
そして囲む様に岩と笹でしょうか、植物がのびのびとした筆致で表現されています。
鹿は長寿の仙獣であり、また七福神のひとり、福禄寿の「禄」と同音であることから吉祥を表す動物とされています。


周縁に目を移しますと、赤、緑、黄、ところどころに金色を使った華やかな上絵付けで軽やかに草花が描かれています。淡い緑と黄色、はっきりとした赤色の明るい色彩がきれいです。

伸びやかな絵付けで動物の表情などからも、どこかゆるさが感じられて穏やかな気持ちになりますね。
また、落ち着いた呉須の色味と華やかな上絵の色、上絵と下絵の技法の違いから受ける見え方の違いといった対比が魅力的です。

底が平らで安定感があるのでお菓子を盛ったり、ちょっとした取り皿として使っても良さそうですね。
華やかだけれど落ち着いた印象も受け取れる魅力を持ったお品です。