黒薩摩塁座花入

2023年12月07日

12月に入り日増しに寒さが感じられるようになりました。冷たい空気が冬の到来を感じさせます。

さて本日は最近のお花と花入をご紹介いたします。

花入:黒薩摩塁座花入 高さ22cm 口径3cm
 花:寒菊/照葉(木藤)

【花】

寒菊:アブラギクを原種とした冬咲の園芸品種 12月から1月にかけて咲き、花色は黄色が多い。
   寒地では葉が赤く照り、美しいことから特別に「照寒菊」と呼ぶこともある。

木藤:キブシ科の落葉低木。日本特産種で全国の山地に自生する。冬に花芽を下に垂らし、
   春に薄桃色や薄黄色の花を咲かせる。実は五倍子(ヌルデの木にできた虫瘤)の代
   わりに、お歯黒などの染料として使われてきた。

木藤の赤く紅葉した葉が映えますね。寒菊の葉の淵も少し赤く色づいていて綺麗です。
    

【花入】
黒薩摩塁座花入

江戸中〜後期ごろのものと思われます。
重厚感のある佇まいが空間を引き締めるようです。
また首あたりに掛け流された釉薬の景色がアクセントになっています。


薩摩焼は朝鮮出兵した島津義弘が朝鮮の陶工を日本に連れ帰り、薩摩の各地で窯を開かせたのが始まりとされます。薩摩焼には「白もん」と「黒もん」と呼び分けられることがあります。
「白もん」とは朝鮮から持参した白土を原料に錦手などの絵付けを行った藩主好みの御用品として生産され、「黒もん」は薩摩で多く採れる鉄分の多い陶土で日用雑器が作られます。


さて、今回のお品の口と胴あたりを見ますと、ポツポツと鋲のような丸い突起がついているのがわかります。これは「塁座」(擂茶)と呼ばれる装飾の一種で、他にも釜や水指、茶入などに見られることがあります。「塁座」(擂茶)とは一説によると、中国で茶を研磨する擂粉木(すりこぎ)のことで、頸の周りに丸い鋲があることからこの名が付けられたそうです。

しっとりとした深い黒色が寒い冬によく合いそうですね。

〈参考〉
『陶磁大系 第一六巻 薩摩』平凡社 1972年
『原色茶花大事典 監修 塚本洋太郎』淡交社 1988年