中田雄一さん工房見学

2018年08月04日

 

暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は先日工房にお邪魔した時の様子も交えて、新たに扱わせて頂く作家さんをご紹介いたします。

 

<中田雄一(なかた・ゆういち)>

1980       北海道美唄市生まれ
2005       東北芸術工科大学陶芸卒
2007       金沢卯辰山工芸工房修了
2011〜 金沢に工房をつくり、個展を中心に活動中
週末陶芸体験「ねんどスタジオ」を2017まで主宰
2017〜 陶土や陶石を使った土壁の設計施工をはじめる

 

中田さんは金沢で活躍されている陶芸家で、ギャラリーでの常設販売や「春ららら市」などのイベントにも多く出展されています。

中田さんの作品の中に釉調がとろりとやわらかい色味や質感のものがあり、茶道具としても好まれる阿蘭陀焼に雰囲気が似ていたため、阿蘭陀写の作品製作を依頼しました。

今回はその試作品を見せていただけるとのことで工房へお邪魔させていただきました。

 

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(工房内の打ち合わせスペース)

 

中田さんの工房は石黒商店からも近い材木町にあります。

金沢町家を自らの手で改修した工房で、その土壁もご自身で塗ったものだそうです。

最近では陶土や陶石を使った土壁のお仕事もされているそうで、以前、当店にお越しいただいた際に土壁のサンプルも見せていただきました。

遊び心を持って楽しく仕事をされているのがお話を聞くだけでも伝わって来ました。

 

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(卯辰山の陶石は二種類使っているそうです)

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無造作に置かれているこの石は卯辰山から土地の持ち主に許可をとって採石したそうです。

一度に100キロほど掘って持ち帰り砕いて陶土や釉に使うとのこと。

陶土の三割はご自身で採った土を使い、あとは九谷焼の花坂陶石などをメインに配合を変えつつ製作されています。

また、お話をお伺いしてすごいと思ったのは、同じような出来の作品でも貫入の入り具合を調節できるということです。

茶器などは味を出すため貫入を入れる、レストランの食器は使い勝手を考えて貫入を減らすなど、使い手の要望に応えることができる高い技術があるからこそ、それが仕事の幅に繋がっているのだと思いました。

作品そのものだけではなく原料のお話も伺うことができ、普段の古いものを仕入れる時とはまた違い、新鮮でとても勉強になりました。

 

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さて、今回試作していただいている阿蘭陀焼とは江戸時代にオランダ東印度会社によってもたらされた(オランダ船で輸入された)器のことです。

その主体を成すのはオランダのデルフト窯の製と考えられますが、他にイギリス・イタリア・スペイン・フランス中近東などの軟陶も含まれます。

江戸時代にヨーロッパから入って来た莨壺や薬瓶として使われていたものが、茶道具として水指や香合などに見立てて使われています。

異国風な阿蘭陀焼は他の道具と材質や技法が被らず存在感があるため茶道具として大変喜ばれます。

 

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今回は、実際にある一つのものを完璧に写すということではなく、我々が見てきた中で良いものの特徴などを盛り込んで理想のものを作って頂くという贅沢な試みになりました。

試作品を手に取りながら、大きさや質感・重さ・口作りや高台の作りなど全体の雰囲気も含めてどのようなものを作っていただきたいかお伝えしました。

阿蘭陀水指の底面は土見せ(釉薬がかかっていない状態)のものが多いのですが、釉薬がかけてある方が汗をかきにくく使いやすいのではという提案をいただき、底にも釉薬をかけてあるパターンのも作っていただくことになりました。

中田さんはニュアンスとして写しを製作するのは初めてとのことで

「写せば写すほど下手さが浮き彫りになる仕事なんだな、写しは」とおっしゃっていたのが印象的でした。

感覚としてタイムスリップをしながら作られた作品が最終的にどのように仕上がるのかとても楽しみです。

 

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当店は、今年の11月16日〜18日に金沢のホテルKUMUで開催される「KOGEI Art Fair Kanazawa 2018」に出展いたします。(昨年の様子はこちらをご覧ください)

その会場にて、今回製作頂いている水指二種と建水をお披露目する予定です。

開催が近くなりましたらブログにてお知らせいたします。

 

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また、他にも食器やちょっと変わった花入などもお願いして置かせて頂けることになりました。

入荷しましたらお知らせいたしますのでお楽しみに。

 

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