吉野絵平椀
2016年02月13日
今週の金沢はこの時期にしては晴れた日が続き、ほんの少し春が感じられました。
とはいえまだまだ寒い日も続くので温かみのあるものは手放せませんね。
さて、本日は黒地に赤の映える吉野絵のお品をご紹介いたします。
吉野絵平椀 (大正~昭和)
<蓋>
口径 14.0cm
高台 5.8cm
高さ 2.5cm
<身>
口径 13.0cm
高台 6.5cm
高さ 5.5cm
吉野絵とは奈良の吉野地方で作られる漆器に描かれた装飾絵で、一般的に芙蓉や葛や牡丹などといわれる五弁花を中心に枝と葉をほぼ相対的に朱や黒の一色の漆絵で描いたものです。この種の文様がいつごろからどこで描かれるようになったかは明らかではありませんが、一説には秀吉の吉野の花見に共をした茶人が考案したともいわれています。
木地は底から立ち上がりにかけてだんだんと薄くなっており、胴部分の「かつら」と呼ばれる加飾挽きが全体を引き締めています。
高台や口縁部のラインがシャープなので手取も軽く見えますが底が厚手なため手に心地よい重みがあります。
黒地にたっぷりとした朱漆でのびやかに絵付けされ、口縁部が少し端反りになっているので見込みから全体に描かれた花が開いてくるような広がりがあります。
絵の線が良くメリハリがあるのでモダンな印象を受けますね。
平椀なので主に煮物椀(加賀料理 治部煮)や蒸し物の椀として茶懐石に用いられます。
お茶の席では和食ですが、ご家庭でもこの文様や色合いに合うお料理や、お皿も意外な組み合わせの発見がありそうで考えるのも楽しくなりますね。