太田垣蓮月 短冊「蝶」

2017年03月25日

3月は利休忌の季節です。

利休の祥月命日は旧暦の2月28日ですので、新暦だとだいたい3月か4月になります。

利休忌には菜の花や、法要ということで蝶のお道具を用いることもあります。今回はそんな蝶のお軸をご紹介いたします。

 

 

太田垣蓮月 短冊「蝶」

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太田垣蓮月は幕末の女流歌人です。本名は誠(のぶ)。33才で出家して蓮月を名乗りました。美人で才女の誉れが高く、和歌の他、書・茶・作陶などでも作品を残しています。

今回のお軸は蓮月が81才の時のもので、蓮月らしい仮名が短冊いっぱいに書かれています。

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「てふ うかれきて 花のゝ露に ねむる也 こはたかい(ママ)めの こてふなるらん」(蝶 浮かれ来て 花野の露に 眠る也 こは誰が夢の 胡蝶なるらん)

ふわふわと飛んできて花の露にとまる蝶。この蝶は一体誰の夢の蝶なのだろうか。

 

これは中国の荘子の故事、「胡蝶の夢」を元にした句と思われます。

「胡蝶の夢」は荘子が夢の中で蝶にになって楽しみ、“自分”と“蝶”との区別を忘れてしまったというもので、転じて人の世が夢のように儚いことのたとえとして使われます。

 

蓮月の“誰か”にどれほど具体的な思いがあるかはわかりませんが、このお軸を掛ける際は、蝶を通じて春を感じるだけでなくだけでなく誰かに思いを馳せてもいいのではないでしょうか。

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(表装も春らしい色合いです)