伊万里奈良茶碗

2014年05月31日

10257892_808412352505283_3254243807600629207_o伊万里奈良茶碗
江戸時代後期
碗 11×6×4.8  /  蓋 10×3×4 (cm) 寸法(口径×高さ×高台径)

今回のお品は、蓋付染錦手のお茶碗をご紹介いたします。

むかしの蓋付のお茶碗は現代のものより比較的小さめの作りのものが多いです。小振りの茶椀は木製の椀を主流に、鎌倉時代以降から作られ始めました。陶磁器のものは江戸時代から出現したようです。
一般に蓋のついたお茶碗のことを蓋付碗や飯茶碗、奈良茶碗といいます。奈良茶碗とは奈良地方の茶粥を食べるのに用いられていた茶碗です。
蓋を取って裏返してみると模様の向きが碗と同じになり小皿としても使えます。むかしは茶漬けを食べるときに一緒に奈良漬などお漬物をのせて食べていたのかもしれませんね。
1800164_808412512505267_176016637271669784_o10379781_808412492505269_4055999198774467041_o
また、このお品は「染錦手茶碗」とも呼ぶことができます「染」はよく知られている染付けのことをさし、「錦手」というのは色釉や金、銀彩での上絵付けのことをさします。この染錦手を作るためには、まず素地に呉須で下絵を描き(染付け)、高温で本焼きした後に鮮やかな彩色をほどこして、錦窯でもう一度低温で焼きます。このように工程を重ねることにより煌びやかな装飾が可能となります。

続いて意匠に注目すると、染付けの青と赤絵と金彩とが相まって豪華に見せています。丸窓の中に花の模様や後ろに乱亀甲文様を入れるなど様々な文様が描かれていますが、煩雑にはならず伊万里らしいシンメトリーな図柄で収まっています。
このようなお茶碗は金沢の料亭では蓮根蒸しや、煮物(冷,温)でよく見かけます。運ばれてきたときの見た目の美しさと、蓋を開けた時のお料理の盛り付けと二度の喜びを味わえて食卓も華やぎますね。