尾上柴舟筆 団扇
2014年06月14日
尾上柴舟(おのえさいしゅう)筆
団扇 五本入
全長 38.5cm(そのうち扇面25cm)/ 幅 22cm
皆さんのご家庭には団扇はまだありますか?
扇風機やクーラーなど便利な機械は色々ありますが、少し暑い時には団扇を使って扇ぐことがまだまだあるのではないかと思います。もちろんその涼しさは微々たるものですが、団扇が手元にあるだけでなんとなく涼を感じられるような気がいたします。
ということで本日はこれからの季節にあわせた団扇をご紹介いたします。
五本入で「清風」と箱書されたこれらの団扇は、それぞれに涼しさを感じさせる夏の歌が、流れるような仮名文字で描かれています。
爽やかな青い団扇を例にあげますと
「みつしほの なみにぬれたる いしかきに すゝしくうつる ふねのともしひ(満ち潮の浪に濡れたる石垣に涼しく映る舟の灯)」
と書かれています。おそらく夕方(だいぶ暗くなってきた頃か)、満潮の浪でしっとりと濡れた石垣に、チラチラと映るオレンジまたは白色の灯に涼しさを見いだして歌ったのでしょう。
このような歌を作り、さらに団扇に流れるような字で書いたのは尾上柴舟という明治から昭和初期に活躍した国文学者であり、歌人であり、書家でもある人物です。平安時代の仮名文字を研究、再現につとめ、その書は“昭和の藤原行成”と言われるほどでした。
団扇の扇部分は縦に長い楕円形で、表には五本それぞれ違う色の絹が貼られています。柄部分は少し細めで角が無いように丸く作られており、全体的に歌とあわせてとても繊細な様子が感じられます。
ここまでのご紹介で、こんなに綺麗に作られた団扇をどうやって使うのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かにこれらの団扇で大きく扇いで、涼をとるのは少し難しいです。しかし、その分飾って涼をとってみてはいかがでしょうか。お茶会での待合や玄関先、応接室などお客様にお待ち頂く場所に飾るのもきっと喜ばれると思います。
見て、読んで、想像して、もちろんそっと扇いでみて…色々な涼の取り方を楽しめるお品です。