三代大樋赤茶碗
2020年04月18日
昨年には思いもしなかった状況になっていますね。
当店も店舗の方は休業しておりますが、電話・メールでのご対応やBASEショップ、ブログの更新は続けていこうと思います。
さて本日は、金沢のやきもの「大樋焼」の茶碗をご紹介いたします。
三代大樋赤茶碗 七代大樋極箱 <江戸中期>
口径 10.5㎝
底径 4.5㎝
高さ 7.3㎝
やや小ぶりで腰の膨らんだ柔らかなシルエットの飴茶碗です。
全体的に赤みのある飴釉が掛かり、初代から伝わる大樋焼の意匠である渦巻文様が刻まれています。
箱書きには赤茶碗とありますが、この時代は飴釉でも赤茶碗と呼ばれているものが見受けられます。
茶筅摺れ部分などの茶碗の内側が丁寧に削られ見込みは広くたっぷりとしており、茶溜が深くつけられています。
薄作のため手取りも軽やかでざりざりとした胎土が表情を見せ、釉薬は艶やかで味わい深い茶碗です。
高台内にも渦状の文様がみえ丁寧に作られていることが窺えます。
三代大樋の印はありませんが納められている箱には七代大樋による極め書きがあります。
道具を鑑定することを極めるといい、これを証明するものを「極」といいます。作者自身が箱書きしたものを「共箱」というのに対し、子孫・鑑定家などの後の人がしたものを「極箱」と呼びます。
こちらの箱からこの茶碗が三代大樋の作であると七代大樋が鑑定し認めたということがわかります。
三代 大樋長左衛門(勘兵衛)
享保10年(1725)-享和2年(1801)※諸説有
二代大樋の次男。初代にみられるような豪快さは影をひそめ、渦文などにはヘラ目などを巧みに使った新鮮な感覚を織り込んだ作風を見せている。大樋焼をより茶陶に近づけようとした。
七代 大樋長左衛門
天保7年(1836)-明治29年(1896)※諸説有
五代大樋の四男。六代大樋の弟。七代の時代は幕末から明治維新という日本の歴史の動乱期であり、藩の保護が絶え、そのため佳品は少ないが時代の影響からか小品なものが多い。
<生没年についての参考>
中央公論社『日本陶磁全集22-光悦 玉水 大樋-』昭和52年発行
『大樋長左衛門 宮崎寒雉 歴代展』図録 平成元年発行