九谷焼御堂花詰文盃
2020年10月24日
いよいよ明日は国立工芸館が一般公開されますね。
展示作品も楽しみですが、建物がどのようになっているのかも気になります。
入館にはオンライン予約が必要なそうですので、行かれるご予定の方はお気をつけください。
さて、本日は金襴手の華やかな盃をご紹介いたします。
九谷焼御堂花詰文盃 <明治~大正>
口径 6.5㎝
底径 3.5㎝
高さ 3.0㎝
側面は色とりどりの花で埋め尽くされ、見込みには金彩で月を背に雁が飛び、中心には浮御堂が描かれています。
側面は華やかですが見込みは金銀彩のみで表現され、浮御堂が影のように浮かび上がってみえます。
月を背にといいましたが、背景が赤いので夕焼けにも見えてきますね。
器形はシンプルなため華やかな絵付けが際立っています。
高台には四角で囲まれた「九谷」の文字。
どこの窯かはわかりませんでしたが、花詰文や金粒などの技法にも明治期の九谷焼らしさがよく出ています。
内側に比べて外の絵付けは四分一銀に草の絵と落ち着いた雰囲気にまとめられています。
見込みに描かれている浮御堂や雁から、モチーフは近江八景のひとつである「堅田落雁」ではないかと思われます。
近江八景は中国の瀟湘八景にちなんで選定されており、「堅田落雁」は瀟湘八景の「平砂落雁」に対応しています。
堅田落雁とは、琵琶湖西岸の湖上に突き出た浮御堂付近の湖上に雁の群れが舞い降りる情景を主題としています。
描かれている浮御堂は臨済宗の禅寺、海門山満月寺です。平安時代に恵心僧都が湖上安全と衆生済度を祈願して建立したといわれています。
現在の建物は昭和12年の再建されたもので、境内の観音堂には重要文化財である聖観音座像が安置されています。
手に取ってながめていると盃一つで旅行に行ったかのような気分になれますね。
また、訪れたことのない土地だと旅行に出かけて実際に絵の情景を目にしてみたくなってきます。