金岡宗幸 小田巻蓋置
2020年05月09日
最高気温が20度を越す日がほとんどとなり、気が付けばもうすっかり春ですね。
むしろ、梅雨に差し掛かっていると言った方がよいのかも知れません。
今回は今の時期やこれからにも合うお道具をご紹介いたします。
金岡宗幸 小田巻蓋置 淡々斎箱
幅 5.7㎝
高さ 4.5㎝
金岡宗幸(かなおか・そうこう)
1910(明治43)~1982(昭和57年)
金沢市生まれ、本名幸次。
祖父の代より鋳物を家業とし、父幸一郎に師事。
昭和14年に砂張糸目鋳造の研究開発に成功する。
同57年鋳造砂張で石川県指定無形文化財保持者に認定される。
内側までリアルな糸目のある、緻密な鋳物です。
正面と裏に結び目があり、デザインとしてよく考えて作られていることが分かります。
ところで、箱蓋表書の小田巻は「苧環」とも書きます。
「苧(お)」とは麻・苧麻(からむし)という植物、またはそれらから採れる繊維のことを意味し、「苧環」は紡いだそれらの糸を巻子に巻き付けたものをいいます。
この糸巻きの形にちなんで小田巻(苧環)と名の付くものは多く、辞書には、鉾なりの杉や枝葉のない枯れ木、小田巻蒸しという料理、中に餡を包んだ求肥の表面に蕎麦粉で多くの線を付けて蒸した菓子等々…。
その中でも植物の苧環は、花の形がやはり似ていることからその名が付いたのですが、丁度今の時期に咲くお花です。
糸巻き自体は七夕の織姫を連想させるため、7月頃に用いられることが多いのですが、こちらは「小田巻」と名付けられているため今回取り上げました。
また、「倭文の苧環(しづのをだまき)」という語句もあり、「倭文」という日本古来の織物を織るのに用いる苧環のことですが、和歌の序詞として用いられます。
いにしへの しづのをだまき いやしきも よきもさかりは ありしものなり
(古今 雑上・八八八)
今の世相に合っているようで引用してみました。
いろいろとまつわるものが多い小田巻、使う場面もいろいろ想像することのできるお道具です。