砂張盆
2020年08月22日
明日は「処暑」となりますが、しばらく蒸し蒸しとした天気が続くようですね。
今年の天気は2週間ほど遅れて動いているような印象です。
さて、本日は久しぶりにお盆をご紹介いたします。
砂張盆
直径 24.5㎝
高さ 2.2㎝
砂張の盆というと青海盆の鍔広なゆったりとした形が想像しやすいですが、本品は直線的なさっぱりとした形のお盆です。
見込には二重線が内側と外側の2回引かれ、叩き目が放射状に入っているのが見てとれます。
また、底面から立ち上がりにかけては挽き跡も見ることができます。
色は砂張らしい、落ち着いた黄灰色です。
砂張とは、銅を主体として錫を加え、ときに銀や鉛も少量含んだ合金のことを指します。
奈良時代には「佐波理」とも書き、明末の産業技術書『天工開物』を江戸中期に和刻したものには「響銅」に「サハリ」というルビがふられています。
中国では「響銅」以前は「鈔鑼」が通用していたそうで、これは銅を叩いて作った碗形の鳴り物だったそうです。
この「鈔鑼」が訛っていき、「佐波理」の字が当てられるようになったという説があります。
また、朝鮮の碗形の食器「砂鉢(サバル)」を語源とする説もあるそうです。
そうすると、「砂張」という字がいつ頃から当てられるようになったか、ということも気になってきますが、ここまでにしておきます。
お品に戻ると、見込に引かれた線が独楽盆のようでもありますし、器形と放射状の鎚目は蓮の葉のようでもあります。
こういったお盆は干菓子器にするのが一般的ですが、大きな物は盆石を飾るのにも用いるようです。
今回は晩酌用のお盆として用いてみました。
お盆も夏には金(かね)のものにして涼を演出してみても面白いかもしれません。
参考文献
岡村秀典、廣川守、向井佑介「六世紀のソグド系響銅:和泉市久保惣記念美術館の調査から」