秋の野蒔絵袖菓子器
2020年11月14日
昨日は「うるしの日」でした。
平安時代、惟喬親王が漆器製法の完全でないのを嘆き、京都嵐山法輪寺に参籠したところ、本尊虚空蔵菩薩より漆器の製造法などの伝授を受けたという伝説があります。
その伝授を受けた日が11月13日だそうです。
今回は、一日遅れですがこの日に因んで、凝った蒔絵のお品をご紹介いたします。
秋の野蒔絵袖菓子器(江戸後期)
幅 6.5㎝
奥行 7.4㎝
高さ 5.0㎝
皆様、実寸はご覧にならずに画像からこのお菓子器の大きさがお分かりになりましたでしょうか。
手箱のような形をしたこのお菓子器、実は手のひらサイズなのです。
広くない表面に菊・薄・萩・女郎花・藤袴など秋草が細かく蒔絵で描かれています。
蓋だけでなく身の側面にも同じ様に秋草の蒔絵が施されていますが、蓋と全く同じ図様にはしていません。
また、蒔絵自体は五十嵐派の技法が使われています。
蓋を開けて中を見ると、身も蓋も梨地となっており、底面も梨地です。
側面には1㎝にも満たない大きさの桐形の紐金具が付いています。
全体をじっくり見ていきましたが、このお品がかなり凝った作りであることがよく分かります。
お品の箱には紙札が貼られています。
これは、南三井家が所蔵していた品物に貼られる札です。
南三井家10代高陽(1900〜1983)は有名な切手コレクターであり、そのため貼り札も切手形にしたと言われています。
多くお道具を所蔵している名家と言われるようなところは、目録を作る必要があるため、このような独自の貼り札や木札を作り、箱につけて管理していました。
現在こういった札は、我々古美術商が品物の価値を見極める時の手助けになったりします。
伝来も品物について知る上では大切な情報ですが、何より物自体が面白いのが一番だと思います。
お品は「袖菓子器」と箱に書かれています。
袖形ではないので、着物の袖に入れて携帯するお菓子器という事でしょうか。
似たような小箱を三井家ではお菓子器として茶箱に入れることもしていたようです。
香合として使うのも良いと思います。
飾っておくだけでも面白い、可愛らしく綺麗な小箱です。