初代西村松逸 扇面蒔絵平棗

2021年03月13日

今年は3年ぶりの大雪でした。雪が降ったり止んだりと天候不順が続いておりましたが、ようやく兼六園の梅が満開になり春らしい日が続いております。

卒業春休みシーズンで観光客を少し見受けるようになりました。 

今回は蒔絵の平棗を紹介いたします。

初代西村松逸 扇面蒔絵平棗

直径 8.2cm

高さ 4.8cm

初代 西村松逸(にしむら・しょういつ)

1895(明治28)年〜1981(昭和56)年

金沢生まれ、加賀蒔絵の名工。

十五歳から五十嵐随甫の弟子であった近田市太郎、叔父の津田鉦一郎に師事して蒔絵を修業する。

茶道具、調度類を手掛けた。

五十嵐派の流れを汲む加賀蒔絵の伝統を踏まえて堅牢で堅実な、そして品格のある仕事を旨とし、研出蒔絵を得意とした。

松逸(歴代)と言えば金沢の蒔絵師の名工として工芸、茶道界では有名です。

西村家は当代まで3代に渡り現代の加賀の蒔絵師として多くの作品を残され、各美術館、コレクター、茶道家に愛蔵されております。

初代の棗の代表作は、雲錦蒔絵、住吉蒔絵、色漆草花蒔絵などございます。

この扇面蒔絵平棗もその一つと言えます。

地に丸い平目粉を等間隔に蒔いています。

その上に全開の扇が平蒔絵で散され、それぞれの扇には四季折々の草花が金銀の高蒔絵で描かれています。

内側は梨地に四方の切金が置かれています。

初代の気の遠くなるような根気が見れる、多くの技法が集約された珠玉の一品です。

この茶器で薄茶を頂ければ、嬉しくなりますね。

桜の季節を待ちながら、扇面蒔絵の「桜」アップで終えます。