九谷稲こき図小鉢

2021年10月02日

 

稲刈りの時期になると、晴れた日の郊外では稲を刈り取る農機、コンバインの音が聞こえます。

ただ少し前までは稲刈りや田植えといえば家族総出の大仕事。「稲刈り休み」を設けていた小学校もあったそうなので、きっと秋にはもっと違う音が聞こえていたことでしょう。

さて、本日はそんな稲刈りに関する絵付けが施された小鉢をご紹介します。

 

九谷稲こき図小鉢(明治)

口径 14.8cm

高さ 3.7cm

 

 

 

やや厚手のどっしりとした器形に繊細な絵付けがされています。

側面は大皿などにも見られる塗り埋めで、緑が鮮やかに発色しています。力強い輪郭線が見込みと対照的です。

高台内は更に一段下がって「九谷」の銘があります。

 

見込みには笠を被り、襷をかけて前掛けをした女性が描かれており、背後にも手前にもたくさんの稲が積まれています。

この図柄は昔の脱穀作業方法、「稲こき」です。

稲を黒いトゲのような刃の間に通して稲からお米の部分だけを取っています。しっかりと稲を持つ女性の体勢からも大変な作業であることが伺えます。

それでも鮮やかな九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)で描かれ、赤絵の瓔珞文様で囲まれた様子はとても華やかです。

また、刃を挟んで女性と反対側には脱穀されたお米が溢れんばかりにたくさん描かれていますが、黄色い釉薬が使われて宝物のように輝いて見えます。

 

 

 

 

5寸ほどの鉢なので汁気のあるものもたっぷり入れて様々な場面で使えますが、その華やかさとは対照的に稲刈りや農作業にも思いを馳せずにはいられないお品ですね。