堅木四方莨盆
2022年01月15日
本日1月15日は左義長ですね。
地域によって松の内は7日迄でお飾りを外すところもありますが、この辺りでは14日まで飾っておくところが多いようです。
ここ最近は雪が降ったり止んだりの冬の金沢らしいお天気の日が続きます。
さて、本日は莨盆をご紹介いたします。
堅木四方莨盆(大正〜昭和)
縦横 17.5cm
高さ 8.5cm
莨盆と聞いても馴染みのない方も多くいらっしゃるかと思います。
莨(煙草)盆とは、火入・灰吹・莨入・煙管の喫煙に使う道具を収納する器のことです。
正式の茶事では、寄付・腰掛け・薄茶席に各々の品質や形状の異なったものを使用します。
取り合わせの調和やお道具選びは席主のセンスが問われますね。
また、薄茶席では正客の位置を示す役割も果たします。
お茶会では実際に使用こそしないものの、莨入に煙草の葉を入れておく、火入には火のついた炭を入れる、灰吹には火を消すための少量に水を入れておくなど、すぐに使えるように準備をしておきます。
煙草は『貞丈雑記』によると「寛永年中(1624~44)、南蛮国より渡りしと也」とあるため、利休の頃にはまだ伝来しておらず、莨盆が茶席に置かれるようになったのも宗旦の時代からではないかといわれています。
本品は莨盆、銅の火入、白竹の灰吹(袴と蓋付き)がセットになっています。
堅木の莨盆は側面に木瓜窓の透彫がされており、少しあげ底になっています。
正方形で深さもあるため一見使いにくそうですが、升を莨盆に見立てたものもあるのでそこからこの形が来ているであろうとも考えられます。
先ほど茶席で使用されるお茶道具でもあるといいましたが、莨盆が茶席に置かれるようになったのも「どうぞくつろいでください」というおおもてなしのこころからでしょうか。
今は禁煙や分煙化が進んでいるのであまりみられませんが、昔の応接室や旅館には灰皿とマッチが置かれていたように莨盆が置かれていたのかもしれませんね。
本品は大きな木箱に収められており十組で一箱となっているので、旅館など大人数をおもてなしする場所で使われていたのではないかと思われます。
なかなか現代の生活で莨盆を使用して喫煙することはありませんよね。
今回は莨盆としての紹介というよりも堅木で正方形で縁の深い作りは何か別のものに転用できるのではないかと思いご紹介いたしました。
中田さんの小さな建水と合わせて花入としてみたり、晩酌セットの器としてご提案いたします。
花を入れるのに付属の銅の火入をそのまま使っても良いと思います。
その他にも器を置いてお香を焚いてみたり、植物や置物を置いてみたりと色々と使うことができそうです。
中にボウルのようなものを入れて氷を入れ、ワインクーラーとしても。
気に入ったものを使いたい、どうやって使おうと色々と考えてみたりするのも楽しいですね。
どのような使われ方をしてゆくのか、これからが楽しみなお品です。