呉須十二角騎馬文水指
2022年12月09日
師走に入り思い出したかのように霰に雷と冬の気候になりました。
本日は呉須の型物水指をご紹介いたします。
呉須十二角騎馬文水指(明末〜清初)共蓋なし
幅 16.5cm
高さ 16.3cm
写真/水野直樹写真事務所
【型物】とは型抜きで成形したもの、または切型などをもって一つの形に定めた作品をいいます。
江戸初期に中国より舶来した交趾・古染付・祥瑞などの茶陶に多くみられ、型を用いていないものでも同質同形あるいは同じ意匠のものを指す場合もあります。
型物水指である【呉須十二角水指】は十二角に面を取り騎馬図や放牛図を描いた呉須の型物水指で共蓋があることが決まりとなっています。
呉須の十二角水指は当初から日本の茶の湯用に造られたものと考えられ、遠州以後中国への注文品とみられています。
呉須水指の部類ではこの十二角か菱馬が上手本名といわれ喜ばれます。
呉須十二角水指(淡交社『茶道美術鑑賞辞典』より)
呉須菱馬水指(淡交社『茶道美術鑑賞辞典』より)
本作は騎馬紋の十二角水指で正面には土橋を騎馬人物が渡る様子が絶妙なタッチで描かれ、そばに松樹や雲に霞む遠山が配されて上部には雷文が描かれるといったお決まりの構図となっています。
呉須十二角水指には共蓋が約束ですが、現在に至るまでに破損してしまったのか無くなってしまったのかわかりませんが本作には共蓋がありません。
呉須十二角騎馬紋水指(淡交社『茶道美術鑑賞辞典』より)
本作は共蓋がないと前述しましたが、共蓋とは釜や水指などの蓋が本体(身)と材種の同種のもののことをいいます。
水指でも共蓋があるものとないものがあり、見立てのお道具の場合、元々蓋のないものを水指としたものか蓋付きのものを見立てた場合などでも有無が分かれますね。
口縁部に釉薬がかかっているものは共蓋がなくのちに塗蓋が誂えられます。
共蓋がある水指の場合には塗蓋は替蓋として扱われます。
共蓋がないのが非常に惜しまれますが、当時中国を幻にしか知らない日本の茶人と日本の茶を知らない中国の陶工の織りなす作品であることを思うとなんとも愛おしさを感じずにはいられません。
来年2月下旬に開催予定の大阪美術倶楽部の「第二回大美アートギャラリー」に出展させていただくことになり本作の出品も予定しております。
また近くなりましたらご案内いたします。