九谷花尽盃
2023年02月17日
立春を過ぎ、まだ雪の予報は出ておりますがたまに出る日差しの暖かさに春が近づいていることを感じられる今日この頃ですね。
近江町市場を通ると菜の花やホタルイカなどが出始め、食材からも季節の移ろいを感じます。
さて、本日は春に焦がれて花尽し紋のお品をご紹介いたします。
九谷 花尽盃(明治)
直径 5.0cm
底径 2.5cm
高さ 3.0cm
高台に「九谷清雅堂」の銘有
明治時代、日本は外貨獲得の為に輸出向けの工芸品生産を奨励し、九谷でも技巧を凝らした華やかな絵付けの九谷焼が作られるようになり世界に輸出されました。
輸出品の多くは大皿、香炉、花入といった大きなもののほか、コーヒーカップやソーサーなどでした。
明治後期になるとその輸出量は減少してしまいましたが、九谷焼は器の種類や画風を変えて再び盛んになりました。
そういった時代の流れを感じさせるのが今回の盃。
花尽、花詰とよばれる様々な花で埋め尽くした図様は、九谷焼に限らず輸出向けの品物によく描かれました。
花尽というと多弁花の花を描くことが多いように思いますが、こちらは菊や牡丹と思われる花のほか、朝顔やスイセン、ユリを葉や蕾と合わせて描いています。
アクセントに側面から見込みにかけて帯を配し、その中を金の唐草文と青い粒々「青粒(あおちぶ)」で埋めているのも九谷らしさが出ていて嬉しいですね。
少し早めのお花見にいかがでしょうか。