唐津金継茶碗
2014年10月11日
風炉から炉に移る少し前のこの時期に、お茶の世界では名残の茶事というものが行われます。11月の新しいお茶の口切りを前に茶壺に残るお茶の名残を惜しむお席です。それに合わせて取り合わせるお道具もすべて控えめに、豪華にならないようにすべきであるとされています。
例えば、障子は継ぎ張りのまま、風炉もやつれ風炉に、お花ももちろん残花を生けます。そして茶碗は呼び継ぎ(欠けた部分に他の破片を継ぎ足したもの。)や金継の景色が趣き深いものを取り合わせるのもよいと言われます。
今回はそんな、今の季節にちょうど良い金継の茶碗をご紹介いたします。
<骨董の話>
唐津金継茶碗 江戸初期
少し小ぶりなこの茶碗は江戸時代初期頃に作られたと思われる唐津焼です。釉薬が半分ほどしかかかっていないため、下はほとんど土見せになっており唐津らしい土味を楽しむことができます。また見込みにはいくつかの石はぜ(土に含まれていた小石が焼成時に表面に出てきたもの。唐津焼ではよくみられる。)があり、そこも大変魅力的です。そしてかなり深みのある色あいと、金継から、長年大切に使われてきたことを想像するに固くありません。
金継とは欠けてしまったり、割れてしまった所を漆で継ぎ合わせ、金粉をまいてまた使えるように直すことです。
残念ながら一度は割れて本来の姿を失ってしまったお茶碗ですが、きらりと輝く金継が新たな魅力となっているお品です。