南京赤絵花鳥絵煎茶碗
2025年10月14日
今年の夏はことのほか暑く、長く感じられました。
ようやく朝夕に涼しさが戻り、秋らしい過ごしやすい日が少しずつ増えてきたように思います。
とはいえ、日中はまだ半袖の方も多く、季節の狭間を行き来するような毎日ですね。
二十四節気では「秋分」を過ぎ、やがて「寒露」へと移ろうころ。草花は露をまとい、虫の音が響く静かな宵に、ふと熱いお茶が恋しくなる季節です。
今日は、そんな秋の一日にそっと寄り添う器をご紹介いたします。

南京赤絵花鳥絵煎茶碗 (18C)
口径 8.5cm
高台 3.0cm
高さ 4.5cm





色鮮やかに牡丹や菊、梅などの草花とかわいらしい小鳥が描かれた煎茶碗です。
面白いのはこの器の形で、胴にゆるやかな段差があり口縁部は朝顔形のように広がっており目を惹きます。
このような形は頭に被る兜のようにも見えるので兜鉢と呼ばれていますが、このお品は煎茶碗で小さいため鉢というよりは猪口の方が呼びやすそうですね。
また、器形を生かした絵付けがより魅力的に見せています。
濃淡のある藍色で囲まれた意匠の構成は芙蓉手のようにも見えます。
芙蓉手とは、中国明代万暦年間(1573~1620)頃に景徳鎮民窯で作られた染付磁器の文様様式で見込中央に大きく円窓を設けその周囲を区切る構成が大輪の芙蓉の花を連想させることからそのように呼ばれました。本作にも窓で区切って花鳥が描かれていたりと芙蓉手の名残が見られます。

側面にもしっかりと描き込みがあり、特に好きな面がこちら。
ふっくらとした小鳥が口を開けて虫を食べようとしているかのように見え、思わず微笑んでしまいます。

次第のよい箱に入り、大切にされてきました。
猪口としてもお料理を盛るのに映えそうな器です。


